つなぎ売り(クロス取引)のコスト計算とマブチモーター (6592)の優待到着

2022年4月18日

22年4月1日に優待品カタログが到着した。この優待はいわゆるつなぎ売り(クロス取引)で取得した。しかしながら、つなぎ売り(クロス取引)に関するコスト計算の勘違いをしていたため、お得に優待品を手に入れることができず、自分にとっては非常に不本意な結果になってしまった。ここで改めてつなぎ売り(クロス取引)に関するコスト計算について整理しておきたい。

株主優待は権利確定日の取引終了時点で当該株式の現物を保有していると株主優待が受けられる。しかし、権利確定日の翌日は株価が株主優待の価値分(配当があればその分も)下落することが多いので、収支としてはトントンになってしまう。つまり、お得に優待品を手に入れられず、例えば3000円の優待品を手に入れるのに3000円のコストがかかってしまうということだ。それ以上に株価が下落すれば損をしてしまうことにもなりかねない。そこで、現物株式と同数の信用売り(つなぎ売り)をすることにより、株価の下落分を信用売りでカバーして、権利確定日の翌日に現渡(信用売り分と現物分を相殺する)することで、優待品を最低限のコストでお得に手に入れるのが「つなぎ売り(クロス取引)を利用した株主優待取得」というものだ。例えば3000円の優待品を手に入れるのに数百円のコストで手に入れられるということになるのだ。

このコスト計算のところで、売買手数料(現渡手数料は無料が一般的)や信用売り分の金利のところはわかりやすい。私だけかも知れないが、わかりにくく勘違いしていたのは配当金の負担についてだ。つなぎ売り(クロス取引)では、現物と信用売りの2種類の取引を行う。現物分は配当金を貰うことができるが、信用売り分は配当金相当額(配当落調整金)を払わないといけない。受け取る額と払う額が同じならコストはかからないことになるので無視して良いのだが、この額が異なるのだ。そのうえ信用売りには、制度信用売りと一般信用売りという二種類があり、制度信用売りと一般信用売りとの間でも負担する配当金相当額(配当落調整金)が異なるのだ。

制度信用売りの場合、人気の銘柄だと株が不足して逆日歩という追加コストを負担しないといけなくなることがある。この逆日歩がしばしば高額になり、取得しようとしている優待品よりも高いコストになることがある。そのため、各証券会社では、つなぎ売り(クロス取引)する場合は、自社で取り扱っている逆日歩のかからない一般信用売りを利用することを推奨している。今は改善されているようだが、私の拙い記憶だと、証券会社のつなぎ売り(クロス取引)の説明箇所には、少し前までは配当金の差額についての説明が記載していなかったもしくは分かりにくい状態になっていたように思う。

それでは具体的に配当金の負担について見ていこう。まず現物株保有分としては、受け取ることができる配当金は源泉税20.315%を引いた残りの分79.685%だ。逆に制度信用売りで払わないといけない配当落調整金は84.685%分、一般信用売りだと100%分の支払いが必要になるのだ。一般信用売りの場合、逆日歩はかからない代わりに、制度信用売りよりも15.315%高い配当金差額を負担する必要がある。

具体的に金額で言うと、1万円の配当金があるケースだと
現物株で受け取れる金額は7,969円(=1万-源泉税2,031円)。
制度信用売りで払う金額は8,469円のため、配当金差額(負担額)は500円(=8,469円-7,969円)となる。
一般信用売りで払う金額は1万円のため、配当金差額(負担額)は2,031円(=1万-7,969円)となる。

配当金がそれなりに出る銘柄の場合だと、この配当金差額により割高に優待品を手に入れることになりかねない。なので、逆日歩発生の可能性、逆日歩が発生する場合はどの位になりそうか、配当金差額はいくらになりそうかを検討して、つなぎ売り(クロス取引)を実行するのか、実行する場合は制度信用売りとするのか、一般信用売りとするのかを判断しないといけない。

私は、つなぎ売り(クロス取引)をする場合に、当初はそもそも配当金で差額負担分があるというのを認識していなかったり、どうやら差額負担がありそうだということを認識した後も負担割合を勘違いしたりしていた。まさにその誤りを犯したのが本銘柄だ。一般信用売りでつなぎ売り(クロス取引)をしてしまったのだ。

100株のつなぎ売り(クロス取引)だったので配当金差額を除いたコストは251円(売買手数料と一般信用売りの金利)だった。100株の優待品は2000円相当(市場価値だと1000円~1500円位だろうか)なので、配当0円の銘柄のように配当金差額がなければ、コスト251円で取得出来て、つなぎ売り(クロス取引)大成功!ということになる。しかし、この銘柄は100株で5800円の配当金だったのと、一般信用売りにしたため、配当金差額が1,178円となり、合計コストが1,429円(=1,178円+251円)となってしまった。優待品価値と等価もしくは割高で取得してしまった。ちなみに制度信用売りだと配当金差額は290円で、懸念された逆日歩はこの銘柄では発生しなかったので、コスト合計は541円(=290円+251円)となり、つなぎ売り(クロス取引)大成功!ということになっていた。

配当金差額のところを正しく理解していれば、この銘柄の選択肢としては、次のどちらかになったはずだ。
・逆日歩の可能性が高い(優待価値<逆日歩含めたコスト)と判断した場合は、つなぎ売り(クロス取引)を実施しない。
・逆日歩の可能性が低い(優待価値>逆日歩含めたコスト)と判断した場合は、制度信用売りを選択する。

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